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[2011/2/2] 将棋ホラ~ 『目の見えない対戦相手』

今晩は・・・。
パーソナリティーの徳川埋蔵です。SCMと虚実の狭間。身も凍る凶歩の世界へようこそ・・・

続々と寄せられる将棋ホラー投稿・・・今夜も選りすぐりの作品をご紹介します。さぁ・・・納涼・真夏の恐怖怪談はじまるよぉ・・・

※長編大作となっております。ぜひごゆっくりご覧下さい。

[R-18] この作品は過激な表現が含まれておりますので、18歳未満の方は絶対に閲覧をご遠慮ください。また心臓の悪い方は、読むのをお控えください…

※この物語はフィクションです。実際の場所・内容・人物・会社などとは無関係です。
 

将棋ホラー
投稿作品#002
投稿者:シュドナイさん


都内のA町に大の将棋好きのヒロカズ(仮名)という高校生がいた。

ヒロカズは小さい頃に父から将棋を学び、A町の将棋倶楽部に所属していた。

大人達は最初、高校生の彼を煙たがっていたが、彼の欲のない将棋は勝っても負けても楽しいと評判になり、ヒロカズはあっというまに人気者に。A町将棋倶楽部の人数も彼のお陰だった。

そしてある冬のことだった……少年がやって来たのは。


Title:
目の見えない対戦相手


「ヒロカズ!次の一局よろしく!」「はい☆じゃありがとうございました。」「ああ、また頼むよ。」

そんな声がA町将棋倶楽部から漏れた。ヒロカズは駒を整え、もう一度相手に頭を下げると、席を離れた。

A町将棋倶楽部は今日も賑わっていた。ヒロカズはその中でも間違いなく一番若い。だからと言ってひけはとらない。今の将棋もヒロカズが無難な攻めで勝った。

ヒロカズが次の対戦相手と対局を初めてちょうど50手目を指した時、将棋倶楽部のドアをノックするものが現れた。入ってきたのは青いレインコートを着て、黄色い帽子を目元まで被った男の子だった。外は雨が降っていた。

「坊っちゃん、どしたね?お母ちゃんは?」周りの大人達は心配して聞いたが、答えず、ただひとこと言った。

「指したい………」

「ん?」

大人達はざわめいた。

「指したい………」

男の子がまた言った。その声にどこか脅すような性質があった。

「そうだな……雨が止むまで相手してやる。」そう言ったのはマサという男でなかなか強い男であった。

「ヒロカズ!アンタの手番だよ!」

「!すみません……」ヒロカズは男の子を見ていたが、慌てて自分の将棋に戻った。


1時間後………

「いやあ、坊っちゃん強いね!」マサが快活に言った。男の子の勝ちだった。

「雨も止んだようだし、そろそろ帰んな。お母ちゃんが心配するよ。」マサが言うと、青いレインコートを着た男の子は頭を下げて帰って行った。「マサさんを破るなんて未来の将棋界に希望が………」

「バカタレ、手加減したに決まってるだろうが。」マサが言った。だが、誰も信じない。

マサは汗をびっしょりかいて焦っていたのは間違いなかった。



次の日、ヒロカズはいつも通り指していた。だが、あることに気が付いて、対局相手に聞いた。

「今日はマサさん来てないんですね。」

「ああん?お前知らないのか?」

「何がですか?」ヒロカズはキョトンとして聞いた。

「昨日帰る途中事故ったんだ………なんでも対向車線からぶっ飛んできた車と衝突したらしい…………だが命に別状はないそうだ。」対局相手が慌てて付け加えた。

「うわあ……ひどい………早くよくなるといいですね、マサさん。」

「ああ。ヒロカズも夜は気をつけろよ。」


トントン。

ドアをノックするものがまた現れた。

「おや、坊っちゃん。いらっしゃい!!」ドアを開けた男が言った。

今日は快晴だった。にも関わらず、男の子はレインコートを着て、黄色い帽子を目元まで被っていた。そしてまた言った。

「指したい…」

「おうっ!今日は俺が相手だ。」そう言ったのはドアを開けた男、シゲであった。「手加減はしない!!本気で相手してやる!」


1時間後……

「坊っちゃん何者だよ?」

男の子は答えない。

ただ頭を下げて帰って行った。



次の日。

「あの……………」

「なんだね?」

「シゲさんは…………」

「ああシゲね………」

再び、居なくなった倶楽部知り合いについてヒロカズは対局相手に聞いていた。

「気の毒にな…………………昨日帰る途中、タバコ屋の角ではねられたらしい。……………………ああ命に別状はないそうだ。」対局相手は言った。


トントン。

今日もドアをノックするものが現れた。例によって青いレインコートを着た男の子が現れた。

「指したい…………………」

「………よし、じゃあ俺が相手だ。」そう言ったのは将棋倶楽部でヒロカズの次に強いとされるカズだった。


1時間後…………

「…………………………………」大人達が息を呑んだ。そんななか、男の子は頭を下げて帰って行った。盤上にはカズの玉の上に銀が成っていた。



ヒロカズはその夜帰宅してもカズの事が気がかりでしかなかった。深夜0時。

思いきって、ヒロカズはカズの家に安否を確かめる電話をした。

1分後受話器がヒロカズの手から滑り落ちた。カズもまた命に別状はないものの、銀行の前ではねられたらしい。



偶然なんかではない。ヒロカズはもはやあの男の子と対局してはいけない旨をみんなに言った方がいいと思った。生憎、明日は倶楽部も休みだ。明後日、伝えよう。






次の日の学校の帰り道、ヒロカズは事件を聞いた時の事を思い出していた。

「対向車線からぶっ飛んできた車と正面衝突。」
「タバコ屋の角ではねられた。」
「銀行の前ではねられた」
「対向車線からぶっ飛んできた車と正面衝突。」
「タバコ屋の角ではねられた。」
「銀行の前ではねられた」
「対向車線からぶっ飛んできた車と正面衝突。」
「タバコ屋の角ではねられた。」
「銀行の前ではねられた」

ヒロカズははたと足を止めた。

「ぶっ飛んできた車……角ではねられた……銀行の前………」ヒロカズはくるりと一回転し、将棋倶楽部に向かった。

鍵がかかっていたが、合鍵を持っていたので、すぐに入室した。そして本棚のファイルを探しだした。探し物は直ぐに見つかった。レインコートを着た男の子の棋譜だ。

「…………………やっぱり。」

マサ…飛車成りで詰み。
シゲ…角成で詰み。
カズ…銀打ちで詰み。

飛んできた車……角……銀行……

一刻も早く皆に伝えよう。そう思ってファイルをしまい将棋倶楽部を出ようとした。

が。


トントン。

レインコートを着た男の子は自分でドアを開けて入ってきた。
「指したい……………………………………………………」男の子が言うと、ヒロカズは心の中では忙しいと言ったのに、気が付いたら座って対局していた。

しかし、流石はヒロカズ。ヒロカズは焦りながらも自分の将棋を忘れなかった。勝てばよいのだ。負けてはいけない。

彼のなかで将棋で初めて勝敗にこだわった。


1時間後………

「詰みだ………」

ヒロカズは香成を決めて相手玉を詰めた。

「じゃあ僕はこれで…………」

「…………………………」男の子が指を動かした。

「?!」

男の子が手にしたのは角。

そしてその先にあるのは……………







ヒロカズの玉。






パチッ。

男の子の角道が香成で開き、ヒロカズの玉の上に角が乗っかった。「うわああぁああああぁあああぁああぁあああぁあぁあぁあぁあぁああああぁあああぁああぁあああぁあぁあぁあぁ!!!!!!!」ヒロカズは挨拶もせず、転がるように出ていった。





「ハァハァ……………」ヒロカズは息をきらしていた。

「逃げ…………」
ブォオオオオン!!!!

クラクションが鳴り響いた。ヒロカズはその時初めてタバコ屋の角に自分がいることに気がついた。

そして。


ヒロカズはトラックの運転手を見た。

青いレインコートを着ている………………

そして、さらに初めて男の子の目を見た。

「あわわわわわわわわわわわわわわわ………………」

ヒロカズは声にならない悲鳴を上げた。


タバコ屋の前で大音量が響いた。







次の日、松葉杖をついて将棋倶楽部にマサが姿を現した。

「よう、ヒロカズ!勝負しようや!」

しかし、誰一人として反応しない。それどころかマサがだれに聞いても、ヒロカズなんて人間は知らないという。

マサがパニックになっていると、ドアをノックするものが現れた…………





皆さんも王手見逃しには気をつけて………

 

 
きゃあぁぁあ~~ぁ!!!
恐ろしいですねぇ・・・・皆さんも王手見逃しにはくれぐれもお気をつけください!

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