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将棋クラブモバイル運営スタッフからのお知らせや戯言を日々アップシマス☆
[2011/2/3] 将棋ホラ~ 『新アバター』
今晩は・・・。
パーソナリティーの徳川埋蔵ですのじゃ。SCMと虚実の狭間。身も凍る凶歩の世界へようこそ・・・
ふぉっふぉっふぉ。
今宵の作品は超大作となっとります。時間を見つけてじっくり狭間の世海へ身をゆだねましょうぅ~…。納涼・真夏の恐怖怪談はじまりはじまり・・・
[R-18] この作品は過激な表現が含まれとりますので、18歳未満の方は絶対に閲覧をご遠慮くだしゃい。また心臓の悪い方は、読むのをお控えくだしゃいね…
※この物語はフィクションじゃ。実際の場所・内容・人物・会社などとは無関係ですのじゃぁ。
将棋ホラー
投稿作品#008
投稿者:リトルとりさん
Title:
『新アバター』
(畜生ッ! また負けかよ!)
彼は直ぐ対戦部屋に入室した。
大体負けが込んだ時の連戦は傷をより深めるだけで普段なら自重する筈なのだが、今夜は大優勢からの余りにも酷いポカによる逆転負けが続いて自制が利かなくなっていた。
対戦メールは驚く程早く届いた。
実は直後にもう一通同じタイトルのメールを受信したのだが、幸か不幸か彼には知る由もなかった。
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[将棋CLUB]対戦開始
アバターサンとの対戦を開始シマシタ
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(初めて聞く名前だ。新規かな?)
そう思いながら彼はURLにアクセスし、角道を開けつつ無難な挨拶を送った。
「ククク……コンバンワ」
「今宵はアナタにアバターになって頂きマス」
(えっ!コメ連投出来たっけ!? しかもアバターってどういうことだ?)
「ワタシに負けたらアナタの魂を頂きマス。ククク……まぁワタシはとても優しいのでアナタが勝ったら見逃してあげまショウ」
彼は薄気味悪さを感じ最後の警告のつもりでコメを送った。
「これ以上冗談を言うならマジで通報しますよ?」
「ククク……アナタ、リョウを知ってマスネ?」
(リョウ――、同じチームで一番仲が良く、他のチームメイトには出来ない話や相談を唯一出来た存在だった。
同い年の十六歳で、悩みを打ち明けたら近い悩みを抱えてたと笑いあったこともあった。
彼が居なかったら俺はSCMにこれほどINしなかっただろう。
だが一月前、何の前触れもなく突然、姿を消した)
「彼がどうしたんだ?」
「彼?ククク……リョウは実は女の子だったのデスヨ。しかも驚くでショウが、誰もが知っているような名家の、深窓の令嬢デシタ。
彼女にはモチロン、アバターになって頂きマシタ」
(アバター? 一月前!?)
まるで雷に貫かれたかのような衝撃が走った。
彼の頭をしたくもない嫌な想像が駆け巡る。
可憐であどけない容姿が人気を呼び女性キャラが増加するきっかけになったアバター『リトルプリンセス』、それは確かにリョウが姿を消すのと入れ替わるかの様に実装されたのだった。
「『亡き王女のためのパヴァーヌ』ご存じデスカ?
セピア色に彩られた風景に、儚く甘美な旋律が流れるワタシの大好きな曲デス。
M.ラヴェルはこの名曲をD.ベラスケスの描いた一枚の肖像画から霊感を得て作曲しマシタ。
絵画に描かれていたのはマルガリータ王女――、近親相姦を繰り返した忌まわしい血族・ハプスブルク一門の姫君デス。
リョウは二人の天才を虜にした王女を彷彿させる、パールのように艶(あで)やかで麗しい魂を持っていまシタ。
瑞々しく薄桃色がかった小さな温もりが愛しくて、イトオシクテ……
爪でそっと引掻いてヤリタイ……
歯で優しく千切ってヤリタイ……
……誘惑に堪えるのに必死デシタ。まぁ頬擦りくらいは許してクダサイ」
彼の耳はバイブの音だけが心の鼓動の様に響く。
彼の目は盤面が霞み、流れる言葉に魅入られる。
将棋の局面はゆっくりと、だが着実に悪化していく。
「その点、昨日の☆マドカ☆は最悪デシタ。
虚飾に腐食され濁り、欲に焦がされ錆びた卑しい魂はおぞましいの一言に尽きマス。
何故あのような脂ぎった男が人気者なのか理解不能デス」
「何故……そんなことを?」
「ナゼ?アナタ達ユーザーが新しいアバターをねだるからに決まってマス。よくもまあ盛ったケダモノのように次から次へと欲しがりマスネ?」
「だからって何もそこまでする事ないだろ!?」
「アナタは何も解ってマセン。芸術家の苦悩ヲ……葛藤ヲ……
まぁアナタの棋譜を見たら容易に想像つきマスガ。
アナタは一応定跡を知り、それなりに手も見えるのでショウ。
デスガ、自分の王を愛しき恋人のように命を掛けて護ろうと思ったことはありマスカ?
敵の王を憎悪しいかなる手段を用いても抹殺しようと思ったことはありマスカ?
それが出来ないアナタは勝負師として欠陥品デス。
……まぁいいデショウ。
特別に昔話を聞かせてあげまショウ。
今から三百年ほど昔、六代家宣が治めていた宝永の時、上方に市村久右衛門という人形師がいまシタ。
真面目で向上心に溢れた彼はより視る者の心を捉える市松人形を作りたいと、人毛だけに留まらず爪も貼ることを思い付きマシタ。
実際作ってみると、以前より格段に魅惑的な人形が出来たのデス。
……同時に彼は少女の爪を切る事に、説明のつけ難い興奮を覚えるようになりまシタ。
ある日、彼は少女の爪を切ろうとして、誤って剥いでしまいまシタ。
苦悶に歪む顔……
二筋に輝く涙……
滴る真紅の雫……
彼は此まで目を背き続けた悪魔の甘言に身を委ねまシタ。
ゆっくりと少女の細い首に両手を掛け、柔らかで蝋のように白い項(うなじ)の感触に誘(いざな)われるように力を籠めていきまシタ……」
目眩は容赦なく彼を襲った。
座っているのに、奈落に墜ちていくかの如く足元の感覚が無くなる。
だが、指だけは冷や汗で滲むのに構わず、狂った様に*を押し続けた。
「幾度の凶行の末、彼は捕らわれ首を討たれまシタ。
しかし彼の魂は自ら作った人形にしがみつき、濯がれませんでシタ。
満ち足りなかったでショウ……
サゾ無念だったのでショウ……
ある日、現代の所有者のワタシにそっと囁きまシタ。
『イイホウホウガアルヨ』ト」
「ふざけるなっ! みんなを、リョウを元に戻せ!」
「ククク……随分威勢がいい言葉デスネ。
でもね、ワタシには見えるのデスヨ。
アナタの不安に苛まれたココロが……
アナタの恐怖に蝕まれた指し手が……
しかし、やはり私が睨んだ通り、アナタは騎士に相応しい。
王女に全てを捧げ無上の忠愛を誓うナイトとしてリョウの元に連れていってあげまショウ。
彼女も歓んでアナタを受け入れる筈デス」
「ククク……この王手であなたの王は二十一手詰めデス。
……オヤ、随分考えられマスネ。普段のアナタならノータイムでショウ?
ククク……最後の対局ですから死ぬほど考えてクダサイ。
餞(はなむけ)として仮面のアクセサリの話でもしてあげまショウカ?
自分を偽る内に偽ったことを忘れてしまった哀れな男の話ヲ……」
翌日、
新アバターが実装された。
きゃあああぁぁぁ!!!!
恐ろしいのじゃあぁぁ!!
SCMにまた一つ…凶歩の都市伝説が生まれましたねぇ・・・
ふぉっふぉっふぉ。
さて、
将棋にまつわる『怖い話・不思議な話・都市伝説』はまだまだ募集しております。
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